連載 No.13 2015年9月20日掲載

 

木のカメラ、金属のカメラ


 風の強い場所は木々の形が美しく、雲も表情が豊かだ。

日本海に面しているので冬場は強い風と湿った雪に悩まされる。今回のイメージは北海道江差町。



冬の北海道に撮影範囲が広がったのは、都内に写真事務所を構えた1990年ごろだ。

当時は冬用のスパイクタイヤが禁止され、事故が増えたという報道をよく耳にしたが、

んな理由からか国道の除雪整備がよくなり走りやすくなった。



 真冬の北海道というのは未知の領域で、長く使い込んだ木製のカメラにも少しずつ問題が出始める。

軽量ゆえに風に弱い。雪が解け木に染み込んで凍りつき、組み立てようと思っても動かない。

風がやむのを待っていたり、組み立てに時間が掛かっているうちに、美しい風景は消えてしまう。



 冬場の迅速な撮影を考えると、金属製の組み立てカメラが必要だと分かっていたが、

来の貧乏性でなかなか購入に踏み切れなかった。

「新しいカメラを買ったからといって、作品が売れるようになるわけではない…」そんなことまで考えていた。

 これは、高級な楽器を買ったからといって、演奏がうまくなるわけではないという考え方に似てなくもないが、

それと同じように、フィルムや印画紙にお金を使って撮影を重ねたほうが、よい作品が作れるのではないか。


 そんなことを考えているときに臨時収入があった。独立したことによる税金の還付金を手にし、

旧西ドイツ製のフィールド(組み立て)カメラを購入することになる。

 少し重いが非常に精密な金属製で、気温や湿度に影響なく過酷な条件もこなしてくれる

購入時は歴史的な円高で、正規の販売店で100万円近いものが並行輸入品ゆえに半額だった。

それから20年以上の付き合いになる。



 不満を感じると自分で手を加えるので、見た目はボロボロだ。

表面の革を剥がして、所々ドリルで穴を開けている。これは三脚にしっかりと固定するためだ。

傷みやすい蛇腹は暗室用の黒いカーテンを貼って2重にしてあるのでつぎはぎだらけ。

カメラの内側も、少しでも画面を大きくするために金属部分を削って広げた。

これは削りすぎて光が漏れるようになって、テープで補修。素人故に失敗もあるわけだ。

同じ機種を大事に使っている人には無残な姿に映ってしまうので、ちょっと見せられない。